まずアナログのリスクを考えつつ企業のデジタル化を進めよう

文●ユーザックシステム 編集●アスキー編集部

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本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「アナログのリスクとは?デジタル化(デジタイゼーション)を進めるためのポイント」を再編集したものです。

 デジタル化という言葉を耳にする機会が増えましたが、業務のデジタル化を進めるとどのようなことが起こるのでしょうか? また、デジタルへ移行せず、アナログのまま業務を遂行するとどういったリスクがあるのでしょうか? ここでは、アナログで業務を続けるリスクを説明したうえで、デジタル化のメリット・デメリットや、デジタル化を進める際のポイントを紹介します。

※デジタル化には、デジタイゼーション(アナログデータのデジタルデータ化)、デジタライゼーション(業務・製造プロセスのデジタル化)、DX(全体業務・製造プロセスのデジタル化、ビジネスモデルの変革)の3段階があります。今回は、デジタイゼーションの進め方についてお伝えします。

 デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXについて知りたい方は以下をご覧ください。

【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで
デジタライゼーションとは?効果や業種別の具体例と推進のステップ
デジタイゼーションとは?デジタライゼーション・DXとの違いや具体例を解説

アナログでの業務を続けるリスク

 バックオフィスでの業務や事務作業について効率化を考えるとき、その手法としてよくあげられるのがデジタル化の推進です。アナログで行なっていた業務を、デジタルへと切り替えることで効率化が進むという考え方です。

 では、デジタル化が進んでいない状況ではどのようなリスクがあるのでしょうか?

 アナログのまま業務を続けていると、次のような問題が発生し、経営の支障となる可能性があります。

改ざんや不正の発想に結びつきやすい

 社内業務がアナログのままの場合、規律違反やコンプライアンスへの抵触といった、事業活動の大前提となるルールから逸脱してしまうリスクが高くなります。

 例えば、紙の書類は「書く」「消す」といった筆記作業を簡単に行なうことができます。そのため、紙の書類の管理では改ざんといった不正が起こる可能性があります。

 また、紙ベースで行なう承認フローでは、承認印をだれが押したかがあいまいになりやすい傾向にあります。例えば急ぎで承認印をもらう必要があるにもかかわらず、承認を得るべき立場の人が不在だった場合、本人以外の人が承認印を勝手に使うといったことも起こりえます。

 このように、紙ベースの承認作業や管理業務は、改ざんや承認印の無断利用といった不正に結びつきやすく、人によっては不正が頭をよぎる原因になっていると考えられます。

 また、不正を防ぐ目的で管理を厳正にすると、フローがより複雑になり手間がかかるという副次的なデメリットも発生します。

 近年は、SNSにより簡単に情報が拡散される時代になり、企業に向けられる目はより厳しくなっています。不正を未然に防いだとしても、不正をしようとしたという事実が拡散されれば、企業イメージの低下につながりかねません。

 コンプライアンスや社会理念から逸脱した行為は、企業の経営活動そのものを脅かすほど大きなリスクとなっているのです。

社内の承認スピードの低下

 紙の書類による決裁でよく発生するのが、多くの人に承認印をもらいに回るといった作業です。

 何人もの上司や決裁権限者のところに書類を持って回り、押印を受けなければならないというルールが、多くの企業で慣例となっているケースが見られます。

 その際、承認印をひとつもらうたびに同じ話を繰り返し説明しなければならないこともあります。

 また、申請者が書類を持ち回るのではなく、順々に回覧する流れの場合は、書類のありかが不明になりがちです。申請をしたのに可否の連絡がなく、書類がどこで止まっているのかも不明になるといったケースです。

 このように、アナログでの申請作業は、申請から決裁や承認までにかかる時間が増大し、積み重なると業務のスピードが大幅に低下するリスクがあるのです。

 変化のスピードが速い今の時代に、仕事の効率性は企業の業績にも影響します。業務を迅速に進めることは、競争優位性の維持につながり、逆もまた然りです。

 つまり、業務のスピード低下による競争優位性の損失が、アナログで業務を続けるリスクのひとつなのです。

バックオフィスの負荷が増加

 アナログによる管理は、申請書類の処理を行なうバックオフィスの負荷にそのまま結びつきます。

 例えば、営業部門で稟議書を作成する際、理路整然と伝わりやすい文章を書ける人もいれば、作文が苦手な人もいます。稟議書に限らず、製造部門における作業手順書や、さまざまな分野での新人教育資料などにおいても同様です。

 文章の書き方、説明のまとめ方などが人によって異なり、品質が均一化されていないことから、書類の承認、差し戻し、再作成指導といった判断が必要となります。このように、アナログによる書類の管理は多くの手間を発生させ、バックオフィスの負荷となっているケースが少なくありません。

 また、企業のリーガル部門や建造物の設計に関する業務では、書類の版が進んでも変更箇所を記載した旧版を保管していかなければなりません。旧版の保存を重ねていく書類管理では、どれが最新版かがすぐわかるようにしておく必要があり、旧版を参照した際にはもとの場所に順番通り戻さなくてはいけません。

 こういった作業も、アナログによる管理の非常に大きな負荷となっています。

コストの増大とリソースの浪費

 アナログによる書類管理では、ペーパーレス化が進んでいないという段階で、すでにコストがかかっています。

 紙での管理を続けることで、書類の印刷コスト、運搬・郵送コストが発生し続けます。また、保管管理においても、保管場所や管理担当といった社内リソースを消費します。

デジタル化による変化とメリット

 上述のとおり、アナログで業務を進めていると、企業の経営活動にさまざまなリスクが生じる可能性があります。

 では、デジタル化を進めることで、アナログでの業務からどのように変化し、どういったメリットが得られるのでしょうか。

業務の効率化

 デジタル化のメリットとして第一にあげられるのは、さまざまな業務が効率化されることです。

書類の手書きや、承認印をもらいに回っていた時間や手間が不要になり、本来の業務に集中することができます。申請する側だけでなく、バックオフィスの負荷も軽減され書類管理業務が効率化されます。

自動化につながる

 デジタル化により、業務の自動化につながる一歩を踏み出せます。

 例えばOCRにより、紙の書類を自動で処理することができるようになります。OCRとは、紙の書類をスキャンし、デジタルデータ化することです。最近では、このOCRにAI技術を加えたAI-OCRが普及しつつあります。AI-OCRはOCRよりも文字やレイアウトの認識精度が高く、手書き文字や帳票などもより正確にデジタルデータ化することができます。

 業務の自動化を図る場合、デジタル化済みの地点からスタートすることで自動化へのスムーズな移行が可能です。ルーティンワーク(定型業務)を自動化できるソフトウェアロボット(RPA)を活用して業務の自動化を進める場合には、デジタルでの管理は必須といえます。

社内リソースの有効活用

 これまで煩雑で多くの手間がかかっていた承認や決裁、書類管理の業務が効率化されれば、人やスペース、時間などの社内リソースが有効に使えるようになります。それによって業務の質が向上し、イノベーションを起こすための基盤もできるでしょう。

 また、デジタル化により業務が効率化され、工数が減りプロセスも簡便化することは、社員にも歓迎されるでしょう。社員の満足度が向上することで、労働意欲や改善提案といった能動的な業務への取り組みが増加し、生産性の向上へとつながります。

情報の管理・共有方法の確立

 情報共有の方法は、紙の書類の場合、書類を回覧する、画像として取り込みメールで送付するといった手段をとります。

 一方、最初からデジタル化された書類であれば、システム上で閲覧許可が与えられた人に瞬時に共有することが可能です。紙と違い紛失のリスクもなく、閲覧許可の範囲やルールの設定ができるためセキュリティーも向上します。

デジタル化を進める際の注意点

 デジタル化のメリットは多く、アナログのリスクを回避するためにもこれからの業務はデジタル化を基本として進めていく必要があります。

 ただし、デジタル化を進めるプロセスでは、注意しなければならない点も多くあります。導入するうえで慎重に進めなければならない点は以下のとおりです。

ITリテラシーとセキュリティーに関する基盤整備

 デジタルツールを導入し運用していくうえで、ITリテラシーの教育は欠かせません。

 現在どのような機能を持つITがありどういった場面で活用されているのか、自社の課題解決に結び付くのはどういったITか、そのITを実際の業務にどのように活かせばいいのか、ITを活用するうえでどのようなリスクやその対策が必要なのかなどの教育を社員に対し行ないます。

 同時に、ガバナンスを効かせる体制を整備します。

 また、ネットワークを利用する以上、セキュリティー対策は必須です。セキュリティーの重要性を浸透させるための教育と意識改革も進めながら、万全なセキュリティーの構築を目指します。

トップダウンによるデジタル化の導入と浸透

 トップダウンで行なわなければシステムの切り替えはうまくいかないケースが多いため、デジタル化の導入を決めたら経営陣や部門長主導で進めていきます。

 そのため、上層部もデジタル化に関する教育を受け、運用の利点や注意点、活用方法などの理解を深めておく必要があります。

ボトムアップによるデジタル化推進と意識改革

 トップダウンでデジタル化を進める場合でも、現場の声は重要です。

 デジタル化の開始時から一定数の社員を導入プロジェクトにかかわりをもたせ、運用中も意見をしてもらうようにすると、スムーズに進められるでしょう。

 また、少人数でのミーティングや定期的な改善提案募集などを通し、効率化に関する意識改革も進めていきます。社員がデジタル化のメリットを実感しやすくなり、次の改善につなげていける体制づくりができます。

社員のおそれの要因を取り除く

 デジタル化に対して、はっきりとした理由がなくても嫌悪感をおぼえる人もいます。こういった社員に対しては、不安を取り除くような対応を心がける必要があります。

 デジタル化に抵抗のある社員の抵抗感をなくすために、関連部署にはデジタルへの切り替えについて事前に案内しておくとよいでしょう。また、システムの管理責任者を設定し、導入したシステムの操作や管理について不明な点はすぐに質問・相談できる体制にするなど、コミュニケーションを図れる環境を整えます。

研修・トレーニングを行なう

 社員がデジタルツールを使いこなせるよう、導入時には研修・トレーニングを行ないます。多くの場合、デジタルツールは随時アップデートされ新しい機能も追加されていきます。運用開始後も、定期的な研修とトレーニングの場を設けましょう。

1ステップずつ実行する

 デジタル化を一気に進めてしまうと混乱のもととなります。社員によっては、混乱によりデジタルツールに対し負の面しか見えなくなってしまうかもしれません。また、取引先にまで影響して迷惑をかけたり、部署の業務が停止してしまったりといったおそれもあります。

 1ステップずつ進め、関連部署と連携しながら順次導入していくことが大切です。

デジタル化は業務効率化と生産性向上に欠かせない取り組み

 デジタル化について、メリットやデメリット、デジタル化の進め方などを紹介しました。

 アナログで業務を続けていくことは、企業の経営活動にとってデメリットとなる、さまざまなリスクが潜んでいる状態といえます。デジタル化に踏み出さなければ、業務の効率化と生産性向上に関して多くの損失を出し続けている状態となってしまうのです。今回紹介したデジタル化のメリットや導入上の注意点を参考に、自社に適したデジタル化の進め方を検討してはいかがでしょうか。

 なお、デジタル化の一例として、紙のデジタル化について「デジタル化(デジタイゼーション)のメリットとは?紙からの移行ステップや注意点」でご紹介しています。ぜひ、ご参照ください。

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