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IPv6 IPoE 10周年記念ミーティングの締めは豪華メンバーのパネル

コンテンツ、アクセス格差、集合住宅 IPv6普及に向けた次の課題

文●大谷イビサ 編集●ASCII

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ミッシングピースは「集合住宅」 首都圏と地方の格差も

 アクセスやバックホールのIPv6化は道筋が付いたが、最後のミッシングピースは集合住宅のネットワークだ。

リアルで開催されたイベントの会場

 集合住宅での課題は共用設備となる各戸へのメタルケーブルとアップリンクの陳腐化。水越氏は「ここは共用部のアップグレードになるし、われわれの管轄しない範囲も多いので、ユーザーとともに進めていかなければならない」と語る。また、ユーザー宅内のネットワークも、WiFiルーターの世代交代に任せるべきなのか、通信事業者やISPがアップグレードを促していくべきなのか、検討が必要になると指摘する。

 そもそもの事業者の責任分岐範囲も検討事項になる。「ケータイ事業者は端末まで管理しているが、ISPはあくまでホームゲートウェイ。個々の端末まで見ていかないと、今後は厳しいかもしれない」と水越氏はコメント。アップルやグーグルは、すでにエッジ端末のクラウド管理の仕組みを構築しており、これに関して通信事業者やISPはノータッチでよいのかと意見を提示した。

ミッシングピースは集合住宅のネットワークの課題

 江崎氏はデジタル田園都市の基盤となるブロードバンド環境でさまざまな格差が生まれている点を指摘。一軒家と集合住宅の格差だけでなく、首都圏と地方の格差も課題になっているという。石田氏も、「今住んでいる都内のマンションは手前までファイバーが来ていて、NTT、UCOM、NUROなどFTTHサービス選び放題。でも、地方だとケーブルテレビとフレッツくらいで選択肢が少ない」と指摘する。

 こうした集合住宅のネットワーク化に関してはローカル5Gというアプローチもあるが、集合住宅はコンクリートと鉄筋の塊なので、電波も通しにくい。「周波数が高くなると、届きにくくなるので、アンテナの数も必要になる」(石田氏)という課題がある。

 なにより集合住宅の課題の根深いところは、ビルオーナー、管理会社などプレイヤーが多く、関係が複雑なことだ。賃貸と分譲で所有形態も異なり、デジタル化も進んでいないため、業界全体のDX化も必要だという。「ロングテールのビジネスなので、道は遠そうだと思っている(笑)」(石田氏)。

 江崎氏も「これはシビアな問題。せっかくクリーンなIPoEネットワークを作っても、サービスを受けられないユーザーがでてきてしまう。ぜひこの問題を共有して、次は不動産デベロッパーの方々をこの協議会にお呼びしたい」と会場に働きかけた。また、デジタル田園都市構想の議論においても、官民一体となった施策が必要だという。「民任せにすると、フリーフォールで東京の一極集中になる。でも、民間任せと民主導は違う。官主導だとうまくいかないというのはこのコミュニティでの共通認識なので、民主導でどのように官を巻き込んでいくのか重要」とコメントした。

モデレーターを務めた江崎浩氏(東京大学大学院教授)

 最後、江崎氏は「このコミュニティの持っている特性はキープし、伸ばすべきところのヒントも得られた。これまでの10年間の成功をもとに、みんなで協力して、次の10年も世の中のための仕事をしていきましょう」とまとめた。

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