「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」ロケ地・横浜市立盲特別支援学校より弱視あるある 第1回

【連載】謎の弱視 見え方いろいろ のぞいてみよう!

文●横浜市立盲特別支援学校専攻科/横浜LOVEWalker

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横浜市立盲特別支援学校

 日本テレビ系で毎週水曜夜10時から放送中の「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」は、弱視の高校生が主人公のドラマです。その舞台に横浜市立盲特別支援学校が使われています。本校は、およそ130年の歴史ある学校です。視覚に障害のある幼児児童生徒への教育活動を行なっています。

 まったく見えない全盲の人と、見えにくいロービジョンといわれる弱視の人がいますが、本校では在学者の多くが弱視です。この弱視について、本校公認キャラクター「しもん」と、弱視の職員で「みゆき」と「まちこ」の3人が弱視あるあるについて話をしていきます。

 もしもお目めに合いましたら、読んでみてください。

自己紹介

しもん:初めまして。横浜市立盲特別支援学校、略して市盲から名付けられた「しもん」です。「校章」の幸福の青い鳥をイメージして生まれた公認キャラクターです。

まちこ:どもども。私は網膜色素変性症(色変)という病気で見えにくくなって、それまでやっていた仕事をやめて、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師の免許を取って盲学校で働いています。

みゆき:こんにちは。私は生まれつき見えにくい弱視で右目は光も感じません。まちこと同じ免許を取って専攻科で職業教育を行なっています。

左より、「みゆき」「しもん」「まちこ」

しもん:「横浜市盲」ってどんな人たちが通っているの?

みゆき:早期教育相談の0歳児から55歳の大人までいるよ。

まちこ:そそ。幼稚部、小学部、中学部、高等部本科普通科←ドラマの主人公はここだよね。高等部専攻科ではあん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうの職業教育を行なってるよ。

しもん:へぇ。そんなに幅広い年齢の人たちがいたんだ。

ランドマークタワー

みゆき:学校は高台にあって、ランドマークタワーやベイブリッジ、富士山が見えるベストなロケーションなのに、私は単眼鏡がないと見えないんだよねぇ。

まちこ:私は夜暗くなるとみなとみらいの夜景はきれいに見えるよ。

まちこ夜景ビジョン

しもん:あれ? 2人は同じ弱視なのに見え方が違うの?

みゆきビジョンではこう見えます

まちこビジョンではこんな感じ

しもん:同じ場所から学校を見ても、2人の見え方はこんなに違うんだね

みゆき:そうなの。弱視っていっても見え方は人によって全然ちがうし、同じ目の病気でも違うよ。

まちこ:私は、網膜色素変性症で視野が狭く、暗いところは見えない。真ん中は見えるから、明るい夜景は見えるよ。ドラマでは空ちゃん(主人公・ユキコの友達)と似た見え方かな。

みゆき:私は、緑内障で視野はあるけど視力が低くてぼんやり見えるの。だから、物を見る時にはルーペ(虫メガネ)を使うか、近づいて見るなぁ。ドラマでは主人公のユキコちゃんに近い見え方だけど、ユキコちゃんの方がかなり見えにくそう。

しもん:へー、そうなんだぁ。知らなかったー! 公認キャラ、クビかなぁ…

まちこ:私と同じ病気で、真ん中だけ見えない人もいるよ。私は、周りが見えないから外出する時は白杖(白い杖)を持たないと歩けないけど、真ん中だけ見えない人は白杖がなくても歩けちゃう。

みゆき:ちなみに私も白杖持ってない。見えにくいけど、視野が広いから1人で歩けるんだ。

しもんフル装備

まちこ:私も視野が狭くなり始めた最初のころは恥ずかしくて白杖使いたくなかった。

みゆき:ドラマのユキコちゃんもかっとうがあるんじゃないかな。

しもん:白杖持ってみてどう?

まちこ:困った時、人に声かけやすくなって、ケガもしなくなって、もっと早く持っていたらよかったかな。

しもん:持ってみて困ったこととかないの? いいことだけ?

まちこ:あー、電車で席を譲ってもらったあと、わざと見えないふりしちゃうかなぁ。

みゆき:「白杖持ってるのに見えてるじゃん」って言われちゃったりね。

まちこ:そうなんだよね。白杖=全盲ってね。でも、弱視でも白杖持って歩きます。

しもん:白杖を持つのってそんなに勇気がいることなのか! 知らなかったよ。

みゆき:私は白杖持たないで歩きます。

しもん:弱視は白杖持つの? 持たないの?

みゆき:どっちもあり!!

まちこ:だから、弱視の見え方は理解されにくいんだよね。

しもん:弱視でもそんなに見え方がいろいろなら、盲学校は大変だろうね。

まちこ:教室はまぶしいと感じる人のために遮光カーテンがあったりするよ。

しもん:この間、いきなりカーテン開けたらメッチャ怒られたのはそのせいかぁ。

みゆき:同じ教室に暗いと見えにくい人もいるから難しい。光の見えやすさで黒板とホワイトボードの両方があるしね。

まちこ:ドラマにも登場するけど拡大読書器も使ってるよ。

ドラマの教室 拡大読書器写真

みゆき:私は大きなテレビに文字が3行ぐらいしか入らないくらい拡大するけど。まちこはあまり拡大しないよね。

まちこ:大きくしすぎると視野からはみ出しちゃう。

しもん:拡大読書器の文字と背景色は白黒だったり、カラーだったり、青地に黄色とか見たことあるなあ。

みゆき:このバリエーションが弱視には重要!!

まちこ:ほかにも書見台っていって机が斜めになるグッズもあるよ。ユキコちゃんと空ちゃんも使ってる。

しもん:あー、あの建築家が製図する時に使うやつね!

まちこ:……。

みゆき:文字を読む時に下向きすぎると、眼圧が上がって頭が痛くなるし、血流が悪くなるから目にはよくないの。書見台は必需品!!

書見台

まちこ:書見台の良さももっとアピールしていかなきゃね。

しもん:よーし! もっとがんばるぞ!!

 こうしてまだまだ3人、いや2人と1羽の話は続きます。

 次回も読んでいただけたらうれしいです。

 もしも、お目めに合いましたら。

「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」

 日本テレビ系で毎週水曜夜10時から放送中。

 勝ち気だけど恋には臆病な盲学校の女の子・赤座ユキコ役の杉咲 花さんと、喧嘩上等だけど根は純粋なヤンキー・黒川森生役の杉野遥亮さんによる新世代ラブコメディー!

文/横浜市立盲特別支援学校専攻科
「みゆき」と「まちこ」のイラスト/関口 千秋
「しもん」のイラスト/横浜市立盲特別支援学校

プロフィール
しもん:横浜市立盲特別支援学校、略して市盲が名前の由来。校章の幸福の青い鳥がご先祖様。公認キャラクター就任1年目。
まちこ:13歳で網膜色素変性症(色変)と診断。徐々に視野狭窄が進行。黒猫をめでながらお酒を飲むのが大好き。
みゆき:生まれつき弱視。右目は緑内障で13歳の時失明。ハンドミルでコーヒーを入れてその香りと共にチョコレートを楽しむのが習慣。