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ミレニアル世代を中心にメッセージアプリが普及

日本の労働者の43%が「在宅勤務は生産性が下がる」と回答、アドビ調査

2020年09月28日 12時30分更新

文● ASCII

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 アドビは9月28日、Adobe Blogにおいて「COVID-19禍における生産性と在宅勤務に関する調査(Productivity/Work from Home Survey)」の調査結果を発表した。

 本調査は、COVID-19により拡がった在宅勤務と、それにともなう生産性の変化や課題を明らかにすることを目的に、米国と日本の労働者それぞれ約1000名を対象にオンラインで実施されたもの。日本の回答者に関する調査データは、6月2日~6月4日にかけて収集された。

 本調査の実施時点で、日本ではすでに緊急事態宣言が解除されていた影響もあってか、従来オフィスに出勤していた日本人の半数近く(49%)が元通りオフィス勤務していることが判明した。フルタイムで在宅勤務に移行している人は、回答者全体のわずか5分の1という結果だった。

 米国の回答者の77%は、柔軟に仕事時間を調整できたり、通勤や集中を妨げるものがなかったりといった理由で、在宅勤務への移行後もそれまでと同等かそれ以上に生産性が上がったとの回答を寄せた。一方で、在宅勤務を経験した日本人のうち43%が「勤務環境が整っていない」(68%)、「集中しづらい」(46%)、「同僚からの協力が得られにくい」(33%)といった理由から「在宅勤務は生産性が下がる」と回答。「生産性が上がる」と回答した21%を大きく上回る傾向を示した。

 在宅勤務における同僚とコミュニケーションについては、米国の回答者の半数以上が「以前と変わらない」と回答。それに反して、日本の回答者は55%が「取りにくい」としている。在宅勤務で失ったものとして、日本の回答者の半数近くが対面でのコラボレーションや雑談を挙げており、これまでの職場では、対面でのミーティングやコミュニケーションが重視されてきたことが伺える結果となった。

 在宅勤務の拡大で多用されるようになったビデオ会議については、日本の回答者の半数以上(60%)が「対面での会議と比較して生産性が低いと感じる」回答。一方で、オンライン会議の頻度の高さに39%がビデオ会議疲れを感じ始めていると判明した。

 また、米国では67%がビデオ会議の生産性を評価しており、34%がビデオ会議疲れを感じていると回答している。これらの結果を踏まえると、グローバル規模での在宅勤務拡大にともないビデオ会議の利用が増えたものの、効果的かつ効率的な利用についてはいまだ模索している様子が明らかとなった。

 ファイルの共有やレビューに使用しているツールを聞いたところ、Microsoft Office 365(51%)が最も高く、次いでAdobe Acrobat(43%)、Google Drive(31%)が挙げられた。また、回答者の87%はメール添付でファイルを共有しており、そのうち70%が生産性の高い方法であると回答した一方、回答者全体の半数以上(55%)が、ファイルのバージョン管理に課題を感じていることが判明。ツールやメールでのファイル共有が乱立することにより、リモート環境でコラボレーションすることの難しさがうかがえる結果となった。

 また、在宅勤務をしている回答者を中心に、書類の4割にデジタル署名が付与されていることも判明した。アドビのプロダクトマーケティング担当シニアディレクターであるスニル メノン氏は、「電子署名の経済的な影響について、アドビでは、いままで数多くの調査を行なってきました。企業のROIの向上や、印刷や配送のコスト削減だけでなく、従業員がより意味のある仕事に集中できることがわかっています」と指摘した。

 平日にメールチェックに費やす時間に関して、過去3年間のデータを比較してみると、在宅勤務への移行が進んでも仕事のメールを確認する時間には変化がないことが判明した(2018年:79分、2019年:78分、2020年:78分)。その一方で、自宅で過ごす時間が増えたにも関わらず、平日にプライベートのメールを確認する時間は減少傾向であることも判った(2018年:58分、2019年:53分、2020年:47分)。

 職場では、メール(65%)や電話(50%)といった、従来型のコミュニケーションツールが主流となっているが、日本の回答者は対面でのコミュニケーション(37%)を重視する傾向が強く、米国での28%と比べて高い結果となった。特に、対面でのコミュニケーションを優先するタイミングとして、辞職のあいさつ(47%)や上司に重要な課題について伝える際(36%)など、緊張感のある場面において重要視される傾向が見られた。

 くわえて、ミレニアル世代を中心に比較的新しいコミュニケーションツールが拡大していることも明らかになった。始業時間までに仕事のメールを確認する回答者は37%にとどまっているが、仕事関連のメッセージアプリ(SlackやTeams chatなど)は半数以上が始業前や休憩時間でも確認しており、業務時間外の気軽なやりとりや緊急の連絡手段として、用途を使い分けて活用している様子がうかがえる。

 今回の調査結果では、在宅勤務の主な課題として、「生産性」や「社内コラボレーション」が挙げられ、特にビデオ会議疲れやドキュメントのバージョン管理に課題を感じていることが明らかになった。また、日本の回答者は対面でのコミュニケーションを重要視しているものの、メッセージアプリなど新しいツールが台頭しており、新しい働き方への移行が進んでいることも判明した。

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