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配送ドライバーも味方につけろ!クレーム撲滅の鉄則 (2/2)

2009年10月09日 10時00分更新

文●三浦たまみ

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トラブルを激減させた1枚のA4用紙

 篠さんは、宅配会社のドライバーと積極的にコミュニケーションを図り、「どうしたら顧客に最高の状態で商品を届けられるか」意見を聞いたといいます。

 たとえば、シリアルマミーの主力商品は「デセールキャラメル」というフレンチトーストタイプのお菓子。冷凍品として発送しますが、配達に4時間以上かかると解凍された状態で届いてしまい、必ずクレームの対象になります。そこで宅配会社に相談しながら篠さんが考案したのが、商品を包む袋にA4サイズのメモを張り付けることでした。

「『要冷凍』や『割れモノ』というシールもありますが、あまりにも多くの商品に貼られているため注意を惹かないそうなんです。ならばシールではなく張り紙はどうだろう、と考えました。貼る位置も考えました。ドライバーさんに、『伝票にあるバーコードは、受注処理のために必ず目を通す』と教えてもらったので、張り紙をめくらないとバーコードが見られない位置に貼りつけました」

 写真でも分かる通り、まずは「ドライバーの方々へ …ご苦労さまです!」と大きな文字でドライバーに向けた手紙であることをアピール。さらに、ケーキのイラストをつけ、どんな商品が入っているのか一目で分からせるようにしています。

「実際、効果はテキメン。ドライバーさんの目を惹き、きちんと読んでもらえるようになったおかげで、配送トラブルは激減しました。“配送会社が届けない”と嘆くのではなく、きちんと届けてもらうためにこちらでができることはないか――あれこれ考えてみる姿勢も必要です」

シリアルマミー


クレーム転じて優良顧客となす

 シリアルマミーでは、クレームをつけた顧客の8割がリピーターになっています。クレームに対して迅速に、かつ誠実に対応したからに他ならないのですが、篠さんはあることを実感しているといいます。

「クレームは、そのお店への期待値が高いからこそ、発生する。私はそう思っています。ゆえにスピーディーに、誠実に対応することで、お客様に納得していただければ、『やっぱりここで買おう』とヘビーユーザーに切り替わる確率はすごく高いんです。男女関係のようなものですよ。好きな相手に対しては怒りがこみ上げるけど、どうでもいい相手には何の感情も湧きません。あれに近い感覚だと思って丁寧に対応していきます」


 シリアルマミーの商品開発は、すべて篠さん1人の仕事。しかし篠さんはシリアルマミーを始めるまでは専業主婦であり、パティシエ経験も一切ありませんでした。にもかかわらず、デセールキャラメルは1ヶ月で6万個も販売するという快挙を達成しています。アイデアの源はどこにあるのか、次回詳しく紹介します。


――ネットショップのエキスパートが斬る!――

セミナー講師や大手ネットショップの社外取締役として活躍されているスタイルビズ代表取締役の村山らむねさんに「クレームへの対処法」についてお話しを伺いました。



クレーム対応は迅速に!スタッフ全員との共有も大切!

エキスパート

村山らむねさん

 クレーマーはロイヤルカスタマーになりやすい――。これはマーケティングの世界では半ば“常識”です。あるショップの商品や対応に満足した顧客は2人の友人にそのショップをおすすめし、何らかの理由でショップに対してクレームをつけた顧客は、8人の友人にそのことを伝えると言われます。

 クレームが発生した時点では悪評が広まってしまう可能性がありますが、クレーム後に迅速で誠意ある対応をすれば顧客の態度は一変。何度も購入するリピーターになる確率は極めて高く、しかも多くの友人にお店の良さを広めてくれる“優良顧客”になる可能性を秘めているんです。クレームをつけるほど、そのお店への期待は高い。ゆえに、はじめは文句を言っていたはずが、最強の宣伝マンに切り替わるというわけです。


スタッフ全員がクレームに対応できる体制を

 クレームが発生したときに、迅速な対応が不可欠なのは言うまでもありません。過去のクレームで返信した文面をテンプレート化して保管しておき、スタッフに共有できるようデータベース化しておくことが重要です。さらに、効率的に検索できるようにタギング(ファイルや情報に「タグ」と呼ばれる短い単語やフレーズをつけて整理していく方法)し、誰もがすばやくクレーム対応できる仕組みを整えておきましょう。同時に、誰が対応しても一定水準以上の接客ができるように、日頃から社員教育を徹底しておくことも必要だと思います。

 クレームの中身は、配送に関する何かしらのトラブルが多いのは事実です。しかし私は、配送会社のせいのみで片づけるべき問題ではないと思います。ネットショップは、配送会社なくして今日の事業拡大はあり得ませんでした。各宅配会社は顧客満足度を高めようと時間指定を始めさまざまなサービスを提供してきましたが、こうした便利なサービスが無償で提供されることを「当たり前」と思う私達消費者にも責任の一端はあると思います。

 ネットショップによっては個々の荷物に「大切に扱ってくださってありがとうございます」と、ドライバーに向けてメッセージを添えているところもあります。トラブルが起きたら即、相手の責任と主張するだけでなく、毎日配達してくれる相手に感謝の気持ちを表す、自分たちにもどこか改善できることはないか考えるなど、お互いがベストを尽くして仕事ができるよう模索していく姿勢も必要ではないでしょうか。


村山らむね(青山直美)有限会社スタイルビズ代表取締役。慶應義塾大学法学部法律学科卒。東芝に勤務後、1995年「村山らむね」として個人ホームページ「らむね的通販生活」立ち上げ。 2000年株式会社イーライフに入社し主にウェブプロデュースやスタッフ教育、個人情報保護マニュアル作成などに携わる。2004年有限会社スタイルビズ設立。 2005年ケンコーコム社外取締役就任。現在、経済産業省消費経済審議会特定商取引部会委員など、多数の委員も任されている。


協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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