塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第17回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
写真は未来を写す
2008年09月14日 15時00分更新
写真は予測の芸術。表現は心の公開
そして撮影。ここが「未来を写す」意識のうちで最も重要なポイントだ。その原因はカメラにつきもののシャッターのタイムラグにある。
通常、写真はカメラのシャッターボタンを押して写す。そこで問題となるのは、ボタンを押してから実際に撮影が始まるまでのタイムラグ。その長さは機種によって大きく異なるが、だいたい10分の1秒前後ある。一般に売られている一眼レフカメラで最も高性能な機種でも30分の1秒以上ある。
これは、実に遠大な時間だ。撮影のために露光される「瞬間」が500分の1秒とか60分の1秒といった短かさであることと比べると、シャッターボタンを押してから実際に露光が始まるまでのタイムラグのほうがはるかに長いのだ。
従って、「この瞬間」を捉えようとしてシャッターを押してももう遅い。実際の撮影が始まった頃には、撮ろうと思った「この瞬間」は終わっているからだ。
そのような遅れを回避して撮りたい写真を撮るためには、「この瞬間」ではなく「次の瞬間」を撮るという心構えが有効になる。シャッターボタンを押した10分の1秒後から撮影が始まる、という意識だ。それは同時に、「次の瞬間」に被写体がどのような状態になっているか、ということを常に予測し続けながらシャッターチャンスをうかがうことにほかならない。
さらに撮影時に予測すべきことがもう一段階ある。それは撮影の「瞬間」に生じる被写体の動きだ。
いかに撮影が「瞬間」的とはいえ、「瞬間」とはある長さを持った時間の経過である。500分の1秒、60分の1秒、4分の1秒、1秒など。それぞれの時間、シャッター幕は開かれ、露光が継続される。状況によって長短の差はあるが、撮影には必ず少し時間がかかるのだ。
もしその間に被写体が動いたら、写真にはブレとして記録される。ブレた写真を撮りたいという意図がない限り、写真の中の被写体ははっきり写っているほうがいい。だから、撮影が終わるまでの間に被写体が動かない可能性が高いと予測できるときに、シャッターを切るのだ。相手がまばたきしないか、風がそよがないか、葉にとまっている虫が羽ばたかないか、といった予測だ。
(次ページに続く)
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