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ソフトコンタクトに歴史的な素材革命進行中!

“ひと月つけたまま”のコンタクト!?

2008年06月27日 04時00分更新

文● 野口岳郎(編集部) 写真提供●チバビジョン

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月刊アスキー 2008年8月号掲載記事

O2オプティクス

日本初のシリコーンハイドロゲルレンズ「O2オプティクス」。開発元のチバビジョン(CIBA Vision)は、アメリカのアトランタが本社。

 メガネは蒸気で曇るし、容貌に影響するし、度が強いと視野も狭まる。コンタクトレンズは着脱の手間のほか、ハードは異物感があり、ソフトは消毒が面倒だ。メンテナンスフリーで24時間よく見えるようにしたければレーシック手術だが、目にレーザーを当てるのには誰しも多少の抵抗がある。

 だがここへきて「寝ている間も付けっぱなしにできるソフトコンタクトレンズ」が登場しつつある。2007年5月にボシュロムが「ピュアビジョン」で1週間連続、今年1月にはチバビジョンの「O2オプティクス」がなんと1カ月の連続装用の認可を得ている。月に1回着脱するだけ、あとはずっと付けていていいとなれば、裸眼視力が向上したのに近い利便性だ。

 これを可能にしたのはシリコーンハイドロゲルという新素材。そもそもコンタクトを夜寝るときに外すのは、角膜への酸素供給を阻害しないためである。ソフトコンタクトは角膜を広く覆うため涙が入り込みにくく、レンズ表面の涙からレンズを通して酸素を取り込む必要がある。従来のソフトレンズ素材は、レンズの含水率を上げ、中を通る水に溶かす形で酸素を運搬する。だが、シリコーンハイドロゲルは、それ自体が水の数十倍という極めて高い酸素透過能力を持つ。

左が従来素材(PHEMA)、右がシリコーンハイドロゲルを、それぞれ乾燥させたところ。PHEMAは水が抜けると形状が変わり、長時間装着時の違和感につながる。

 このため、シリコーンハイドロゲルは含水率を上げる必要がなく、それがもうひとつのメリットをもたらす。従来式の水を多く含むレンズは、水分が蒸発しやすくレンズが収縮して乾燥感の原因になっていた。シリコーンハイドロゲル、特にO2オプティクスのように含水率が26%と低い場合、レンズが収縮しにくく乾燥感が抑えられるという。

 シリコーンの高い酸素透過性は昔から知られていたが、表面が水をはじくため、角膜にべったりくっついてしまう問題があった。しかし'99年に、チバビジョンは表面にメタンプラズマコーティングをかけて親水化(水がなじむ)することで実用化を果たし、米国などで製品を発売した(日本では2004年から販売)。昨年以降は3社が追随し、一気に次世代素材の本命として普及を見せ始めている(素材の詳細や親水化処理方法は異なる)。コンタクトは面倒、あるいは自分の目に合わない、と思っている方も、一度最新事情をチェックしてみてはいかがだろうか。

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