パイオニア(株)は6日、民生用高級スピーカーシステム『TAD Reference One』を発表した。プロ用スピーカーブランド“TAD”(Technical Audio Devices)の民生用スピーカーとしては2世代目にあたり、同社の民生用スピーカーとしては最上位の製品となる。価格は1本で315万円。発売時期は4月上旬の予定。
同日、同社本社にて行なわれた製品説明会では製品説明に先立ち、TADブランドの歴史について語られた。スピーカー担当部長の西國晴氏は、「(録音)スタジオなどで使われるモニタースピーカー(の制作)は、スピーカーメーカーの夢であった」と語り、プロフェッショナル向けのハイエンドスピーカー開発として始まったTADプロジェクトの変遷について語った。ちなみに今年はパイオニアの創業者、松本望氏が最初のスピーカーユニット『A-8』を開発してからちょうど70周年に当たるという。
TADブランドは、プロフェッショナル向けの高級スピーカーユニットのブランド名で、1975年に開発が始まり、1978年に最初の製品『TD-4001』を発売。現在同ブランドのスピーカーは、世界で300ヵ所以上のスタジオ等で使用されているという。TAD Reference OneはTADブランド伝統の技術で生み出された、“パイオニアのオーディオ復活を告げるフラッグシップモデル”に位置づけられている。
TAD Reference Oneは3つのスピーカーを内蔵する3ウェイ式である。最大の特徴は、本体上部に装備された“同軸スピーカーCSTドライバー”と呼ばれるユニットにある。CSTドライバーの3.5cmツイータードーム(中心部の小さなドーム状部品)と16cmミッドレンジコーンは、同社独自の蒸着技術により製造されたベリリウム振動板を用いているという。製造の際には、まず部品の形をした銅板の型に、強度に優れて軽い特質を持つベリリウムを積層蒸着させて100ミクロン程度の厚さの板を作る。その後薬品で銅を取り除くことで、ベリリウムの板が残る。板状のベリリウムを加工して振動板を制作しているメーカーもあるが、固く加工しにくい性質があるため、同社では独自にノウハウを積み重ねた蒸着法で製造しているとのことだ。
TAD Reference Oneのコンセプトは、“音像と音場の高次元での両立”にあるという。CSTドライバーはそれを具現化したもので、ツイーターとミッドコーンによって250Hzから100kHzまでの非常に広帯域の再生を実現したとしている。
CSTドライバーの下には、直径25cmのウーファーが2基装備されており、中~低音域の再生を担当する。磁気回路にショートボイスコイル・ロングギャップタイプの“OFGMS磁気回路”(※1)を採用。また振動板には“TLCC(※2)3層構造アラミド振動板”を採用。磁気回路と振動板により低音から中音域まで歪みのない豊かな音質を実現している。
※1 OFGMS:Optimized Field Geometry Magnet Structure
※2 TLCC:Tri-Laminate Composite Cone
本体外形は、幅554×奥行き698×高さ1293mmの縦長ボディーで、重量は150kgにもなる(梱包状態では200kg近いとのこと)。価格は1本で315万円と、こちらもハイエンドだ。筐体(エンクロージャー)の製造に1ヵ月ほどかかるとのことで、月産台数8台程度とのこと。しかしハイエンドオーディオ製品の注目が高まっている昨今では、この価格で人気を呼びそうな製品である。当初は日本のみでの発売となるが、米国や欧州市場での展開も計画されている。